そば屋で楽しむ、お酒の時間
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長野の地酒を楽しむ
そばと日本酒
江戸時代から続く、そば前の伝統
そば屋ならではの一品料理をつまみに日本酒を嗜み、そばで締めるいわゆる〝そば前〟が憧れという人は多いのではないでしょうか。その始まりは江戸時代。独り身の職人らから広がり、参勤交代のいわゆる単身赴任の侍たちなどにも定着していったとか。
当時、打ちたて・茹でたてのそばを待つ間に、板わさ(かまぼこ)や焼きのりなどのつまみを肴に日本酒を飲んだようです。「天ぬき」「鴨ぬき」という言葉もありますが、たとえば天ぬきは、天ぷらそばのそばを抜いて、天ぷらだけ酒の肴に出してもらう、常連客ならではの楽しみ方。現在はさまざまな一品料理を提供するそば屋も増えています。
酒肴に合わせて酒を選ぶ楽しみ
香り控えめな本醸造酒がそばの香りを引き立てるとも言いますが、あくまでそばは締めの1枚と考えれば、そば前はお好みで。鴨焼きならコクのある原酒もいいし、やさしい味わいのだし巻き卵なら穏やかな純米酒…と妄想が止まりません。
そば屋の多くが昼夜を問わずお酒が楽しめるのもうれしいところ。そば屋ならではのこざっぱりとした風情からか、その粋な姿からか、昼からお酒…と及び腰になることもありません。今回は長野県の銘酒とこだわりの酒肴が揃うそば屋をご案内します。これを機会に粋なそば前、楽しみませんか?
蕎麦倶楽部佐々木
在来種のそばと厳選素材
松本城の南東ほど近くに位置する佐々木。栽培が難しいものの風味の高さや繊細な甘味で知られる在来種のそばを、松本平や聖高原の契約農家と二人三脚で栽培しています。希少で小粒な在来種を、いったん殻もすべて石臼で挽き込み、それらもわずか残すことで食感に生かします。つゆには飛魚、羅臼昆布、焼きあご、枯れ節などのほか隠し味に鶏節を加えます。砂糖はきびと黒糖。佐々木ならではのコクはこうした厳選素材から生まれます。
土地の良いものを伝える心意気
器は地域の良いものを伝えたいという思いから、みすず細工や木曽漆器、地元作家による工芸品を使います。日本酒もしかり。長野県の日本酒のなかから、夏は酸のあるもの、冬は濃い料理にも合う度数の高いものなど、季節と食事に合わせて選びます。「長野の日本酒は野菜とよく合う繊細な日本酒」とご主人の佐々木文宣さん。酸や香りなど、微妙な味わいが出せるのは技術力があってこそとのこと。手づくりの酒肴とともに、昼も夜もそば酒が楽しめます。
蕎麦倶楽部佐々木
住所 松本市大手4-8-3 電話番号 0263-88-3388 営業時間 11:30〜14:00・18:00〜20:00
(そばが終わり次第終了)定休日 月曜(祝日の場合は翌日)
火・日曜夜
北野家本店
善光寺門前、老舗のそば店
善光寺門前、そば屋がひしめくこの界隈でも、そのそばの味わいに加えてそば前の充実ぶりに定評のあるのが北野家本店です。創業は明治33(1900)年、120年を超える老舗が用いるのは霧下そばの名産地である戶隠や妙高の最高品質のそば。石臼手挽きしたそば粉でそばを打つのは次男の誠治さん。そばはしっかりと冷水で締めた細め。二八ならではのさらりとした食感と甘い味わい、そしてやさしい香りが楽しめます。
北信州の地酒で一献
料理を担当するのは東京や神奈川で修業を積んだ⻑男の繁隆さん。和牛もつ焼き、銀だら粕漬け焼きなどのほか、海無し県と思うなかれ刺身の鮮度は抜群。新商品も随時登場するので再訪の楽しみがあります。合わせるのは北信州の地酒。香りも味わいもしっかりとした松尾、食中酒に最適な北光正宗など、定番の日本酒を季節に応じて揃えます。温かなもてなしもうれしいところ。そば屋に長居は無用とはいいますが、腰を据えて楽しみたいお店です。
北野家本店
住所 長野市長野東之門町393 電話番号 026-232-2492 営業時間 11:00〜15:00・
17:30〜21:00(LO20:30)定休日 不定休(夜のみ火曜休)
蕎麦酒房 膳
甘みを感じる香り立つそば
そばは地元白馬や安曇野、伊那のものを主に使いますが、農産物だからこそ、その出来が天候に左右されるのは当たり前。毎年、地域や畑を厳選して仕入れています。「良いものは粘り気が違う」と、店主の梨子田貴裕さん。粘り気の高いそば粉はのど越しも良いそう。とくに品質の良いそば粉は十割で打って限定で提供しています。ざらりとした食感の一方で、のど越しはするりとよく、香り立つそば。手繰るごとに甘味が増してくるようです。
ずらりと並ぶ酒肴の数々
日本酒は季節のもの、吟醸酒、お燗に合う地元の普通酒をそれぞれ数本ずつ、ときに応じて仕入れます。普通酒のお燗酒はとくにあっさりとしてそばによく合うと梨子田さん。一方で華やかな香りの日本酒は女性に人気。グラスでも楽しめるので飲み比べをする人も多いそう。県内屈指の銘酒が揃いますが、酒肴の揃えも圧巻。天ぷらから焼き物、揚げ物、定番のだし巻き玉子など和から、山芋と明太子のチーズ焼きなどの洋までさまざま並びます。
蕎麦酒房 膳
住所 北安曇郡白馬村北城3020-49 電話番号 0261-72-3637 営業時間 11:00〜14:00・
17:30〜20:30(LO20:00)
12月後半〜3月
11:30〜14:00・
17:30〜20:30(LO20:00)定休日 水曜(盆・正月・祝日は営業)
不定休ありURL https://zen.artbi.net/
軽井沢 川上庵
ジャズが流れるモダンな店
旧軽井沢ロータリーのすぐ南、ひと際目を引く黒い縦板張りの建物が川上庵です。緑に囲まれた心地よいテラス席のほか、ジャズが流れる店内には地元工芸作家の器が壁面に並ぶ、軽井沢らしいモダンな空間。旧軽井沢を皮切りに中軽井沢、青山、麻布にも店を構え、開業から変わらず、洗練した空間で季節の食事と締めのそばを楽しむことをコンセプトにする粋なそば店です。
佐久の銘酒を中心に
特注の石臼で自家製粉するそば粉を使って打つのは、店の雰囲気そのままに細く、それでいてコシのある洗練されたそば。江戸前を思わせる辛いつゆによく合います。日本酒はすぐ南に位置する酒処、佐久地方の銘酒を中心に冷酒、お燗と常時10種類程度を揃えます。酒肴は鴨焼き、自家製そば味噌などそば屋らしいものからオリジナルメニューまでさまざま。一品料理は昼も並びますが、夜はさらに多くの品が楽しめます。
軽井沢 川上庵
住所 北佐久郡軽井沢町軽井沢6-10 電話番号 0267-42-0009 営業時間 11:00〜22:00(21:00LO) 定休日 定休日なし URL https://www.kawakamian.com/