あなたはさらっと系?ガツン系? 長野のお酒 味わいマッピング
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長野の地酒を知る
※「唎き酒師」:日本酒のソムリエ。1991年に日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会によって制定された日本酒の販売・提供資格
「酒ディプロマ」:日本酒に関する専門知識やテイスティング技量をもったプロフェッショナル。一般社団法人日本ソムリエ協会認定
お酒の味わいとは?【定義】
お酒の味のイメージとしてよく耳にするのが、「甘口」「辛口」というフレーズですが、甘い・辛いの感じ方は人それぞれ。今回のマッピングに当たっては、お酒の味わいをわかりやすく伝えられるように、下記の4つのグループに分けることにします。
「香りが華やか」とは、香りが高いもの、フルーツの香りにたとえられるお酒もあります。反対に「香りが穏やか」とは、香りが控えめなお酒のことです。「ガツン系」とは、味が濃醇で余韻が残るようなお酒のこと、ワインで言うフルボティタイプです。「さらっと系」は飲み口が軽く、ワインで言えばライトボティに当たるお酒です。
各酒蔵の”最新”の味わいをマッピング
A〜Dタイプに分類すると言っても、各蔵には仕込みの異なるさまざまな銘柄のお酒が造られています。そこで、今回は長野県酒造組合加盟の78蔵のお酒を対象に、唎き酒師と酒ディプロマが各蔵の最先端・最高峰の造りのお酒をイメージして、中間から後味の旨みで分類することにしました。
2人の知識と舌の記憶を総動員してマッピング作業が行われること約1時間。ついに「長野の地酒 味わいマップ」が完成しました!
上の図ではピンクの縦軸が香り(上:華やか、下:穏やか)、ブルーの横軸が味の濃淡(左:さらっと、右:ガツン)を分けています。わかりやすいように図表にしてみました。
A:香り華やか×さらっと系
- 茜さす 純米(土屋酒造店)
- 夜明け前 純吟 生一本(小野酒造店)
- 大信州 超辛口 純吟(大信州酒造)
- 善吉 純米(中善酒造店)
- 翠露 純大 雄町(舞姫)
- 真澄 純大 夢殿(宮坂醸造)
- 明鏡止水 純大 M(大澤酒造)
- アルプス正宗 大吟(亀田屋酒造店)
- 一滴二滴(志賀泉酒造)
- 福無量 大吟(沓掛酒造)
- 松尾 純吟 斑尾(高橋助作酒造店)
- 美寿々 純吟(美寿々酒造)
B:香り華やか×ガツン系
- 梁山泊 吟醸(信州銘醸)
- 信州亀齢 美山錦 純吟(岡崎酒造)
- 川中島幻舞 純吟(酒千蔵野)
- 佐久乃花 純吟(佐久の花酒造)
- こんな夜に 純大 満月(仙醸)
- 本金 純吟(諏訪)(酒ぬのや本金酒造)
- 豊香 純吟(豊島屋)
- 信濃鶴 純吟 頑卓(長生社)
- 雲山 西之門(よしのや・山形屋・坂井銘醸)
- 十六代九郎右衛門 純吟(湯川酒造店)
- 女鳥羽の泉 純吟(善哉酒造)
- 金蘭黒部 大吟(市野屋)
- 初鶯 純吟(木内醸造)
- 今錦 純吟(米澤酒造)
- 和和和 純吟(古屋酒造店)
- 豊賀 純米(高澤酒造)
- yokobue 純吟(伊東酒造)
- 酔園 純吟(EH酒造)
- 高波 大吟(丸永酒造場)
C:香り穏やか×さっぱり系
- 水尾 特純(田中屋酒造店)
- 北光正宗 特純(角口酒造店)
- 澤の花 純吟 ひまり(伴野酒造)
- 若緑 本醸造(今井酒造店)
- ヌメロシス(小布施酒造)
- 大雪渓 レギュラー(大雪渓酒造)
- 姨捨政宗 棚田 純吟(長野銘醸)
- 寒竹 上撰(戸塚酒造店)
- 渓流 蔵囲い(遠藤酒造場)
- 月吉野 特純(若林醸造)
- 七笑 辛口 純米(七笑酒造)
- 御湖鶴 純米 辛口(諏訪御湖鶴酒造場)
- 烈火 大辛口 本醸造(芙蓉酒造)
- 高天 純米 辛口(高天酒造)
- 十九 本醸造「紀」(尾澤酒造場)
- 積善 超辛 純吟(西飯田酒造店)
- 本老の松 レギュラー(東飯田酒造店)
- 白馬錦 雪どけ吟醸(薄井商店)
D:香り穏やか×ガツン系
- 岩波 純米(岩波酒造)
- 深志鶴 レギュラー(奥澤商会)
- 帰山 純吟「参番」(千曲錦酒造)
- 笹の誉 特純(笹井酒造)
- 勢正宗 純米「カープ」(丸世酒造店)
- 緑喜 純米(玉村本店)
- 井の頭 純米(春日酒造)
- 和田龍 登水 純米(和田龍酒造)
- 浅間嶽 純米(大塚酒造)
- 岩清水 GOWARINGO(井賀屋酒造店)
- 菊秀 純米(橘倉[きつくら]酒造)
- スクウェア・ワン(桝一市村酒造場)
- 麗人 レギュラー(麗人酒造)
- 牧水(武重本家酒造)
- 北安大國 純米(北安醸造)
- 北信流 純吟(松葉屋本店)
- ダイヤ菊 レギュラー(戸田酒造)
- 黒澤 特純(黒澤酒造)
- 岸の松 レギュラー(山岸酒店)
- 笑亀 純米(笑亀酒造)
- 北アルプス 純米(福源酒造)
- 天法 レギュラー(天法酒造)
- 山清 レギュラー(山清酒造)
- 斬九郎 純米 無鎖志(宮島酒店)
- 木曽のかけはし 本醸造(西尾酒造)
- 大國 純米 本醸造 (大国酒造)
- 真田六文銭 本醸造(山三酒造)
- 喜久水 黒 純米(喜久水酒造)
※各酒蔵の位置付けは、唎酒師と酒ディプロマの主観に基づく各蔵の最先端・最高峰の造りのお酒をイメージして行っています。銘柄によっては全く異なる分類になることもありますので、参考として覧ください。
※表内の略称の詳細は次の通りです
純大…純米大吟醸
大吟…大吟醸
吟 …吟醸
純吟…純米吟醸
特純…特別純米
純米…純米
長野の地酒の特徴は?【解説】
各タイプ別のお酒の数を比較してみると…
Dの「香り穏やか×ガツン系のお酒」が一番多くなりました。この結果は、実は昔からの長野県の日本酒の特徴を表しています。というのも、山深い長野県では味噌や漬物など発酵食を多用する食文化で、濃い味の料理が多く、日本酒は香りが穏やかで濃醇なものが好まれたのです。とくに雪深い白馬や大町などでは甘もったりとしたガツン系のお酒が造られてきました。
逆に、新潟など海に近い地域では、刺身など魚介類がメインになったことから、淡麗な味のお酒が好まれる傾向にあるそう。県内でも飯山など新潟県寄りにある酒造ではさらっと系のお酒が目立ちます。
2番目に多かったのはBの「香り華やか×ガツン系のお酒」。近年、香り華やかでしっかりとした飲み口の大吟醸や純米吟醸酒が、若い人や女性などに指示され、1杯目のインパクトを求める居酒屋などでもこのタイプのお酒を置くところが増えているそうです。
マップを参考に、自分好みのお酒を探そう
今回ご紹介したマップのなかに、あなたが気になるお酒はありましたか? 唎き酒師と酒ディプロマよると、「昔は水の違いや杜氏の出身地による違いなど、長野県内でも地域ごとに特徴がはっきりしていたけれど、現在は、醸造技術が高くなり、食文化も多様化していきているので、地域による特徴というよりも、各蔵が消費者のニーズもふまえ、それぞれが理想の酒造りを行う時代になった」とのこと。長野県内だけでも幅広いお酒の味が楽しめるようになったということですね。定番の発酵食品以外にも、さまざまな料理との組み合わせを楽しみましょう。
また、今回は各蔵の最先端の造りの銘柄のイメージで分類していますが、蔵のなかでもさまざまなお酒が造られています。“蔵縛り”“酒米縛り”“レギュラー酒縛り”など、テーマを変えれば全く違ったマップができるでしょう。今回の4つのタイプを参考に、自分なりのマッピングを楽しんでみてはいかがでしょう。